障害者雇用の企業側の義務
「障害者雇用推進法」により、障がい者雇用が企業の義務となりました。
どのような企業に障がい者雇用義務が生じるのでしょうか。義務を果たさなければ罰則があるのでしょうか。
経営陣や人事は、法律の内容を理解し正しく対応しましょう。
障害者雇用促進法について
「障害者雇用促進法」は、障害者の職業生活において自立することを促進し、障害者の職業の安定を図ることを目的にした法律です。
内容は下記で構成されています。
- 職業リハビリテーションの推進
- 障害者に対する差別の禁止等
- 対象障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等
- 紛争の解決等
中でも企業側がまず知るべきなのは、企業が雇用する障がい者数を定めている「障害者雇用率制度」です。
法定雇用率はおよそ5年周期で見直されていますが、2021年12月現在では「民間企業:2.3%」となっています。
ただし、障がい者の就業が一般的に難しいとみとめられる業種については、障がい者の雇用義務を「軽減」する除外率制度があります。
障がい者雇用義務が生じる企業とは
「障害者雇用促進法43条第1項」により、従業員が一定数以上の規模の事業主は、障がい者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があると定められました。
具体的には、従業員を43.5人以上雇用している事業主は、障がい者を1人以上雇用しなければならないとされています。
障がい者の就業が一般的に困難であると認められる業種については、雇用率が軽減されることもあるので、該当するのではと思う場合は、労働局などに問い合わせてください。
対象となる障がい者
障害者雇用促進法により、障がい者の定義は「身体障害、知的障害、精神障害、その他心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者をいう」と定められています。
ただし障がい者雇用率の算定対象となるのは、各自治体から発行される「障害者手帳」を保持している人に限られます。
対象となるのは、次の人です。
- 身体障害者:療育手帳を保持する人。
- 知的障害者:療養手帳を保持していて、知的障害者と判定する判定書を保持している人。
- 精神障害者(発達障害を含む):精神障害者保健福祉手帳を保持していて、症状が安定し就労できる人。
差別禁止と合理的配慮の提供義務の対象となる人は、さらに範囲が広がります。
義務を果たすためには
企業の障がい者雇用義務を果たさなくてはと思っても、障がい者雇用経験がなくてどうしたらいいかわからないという企業には、チームを組んで支援する体制があります。
地域障害者職業センターでは、障がい者雇用に関する事業主のニーズや雇用管理上の課題を分析し、障がい者の雇入れ計画、配置、作業環境、労働条件や、従業員への教育に関する助言など、専門的な助言、援助を行ってくれるので安心です。
職場での適応に課題を持つ障がい者に対しても、職場支援員を配置して細やかな支援を行ってくれます。
まずは、ハローワークなどへ相談してみましょう。
罰則について
法定雇用率が未達成の場合は、障害者雇用納付金制度によって納付金を納めなくてはいけません。
納付金は、法定雇用率を達成している企業の調整金や報奨金、助成金にあてられます。
対象は、障害者法定雇用率を未達成としている常用雇用労働者100人を超える民間企業で、その金額は障害者法定雇用率達成に不足している障がい者1人につき、1ヵ月5万円です。
納付金が納付されない場合は、追徴金・延滞金・延滞処分といった制度で徴収が行われます。
違反によるリスク
障がい者雇用の法定雇用率が未達成の企業は、ハローワークから雇入れ計画作成命令が出され、義務を達成するための2か年計画書を作成することになります。
計画1年目の終わり頃に進捗状況を確認され、計画通りに進んでいないと適正実施勧告がなされ、最終的に改善が見られないと判断された場合は企業名が公表されます。
企業名が公表されると、義務を果たさない企業というマイナスのイメージがついてしまい、特に人材確保に影響が出てしまいがちです。